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智のいいなりになる悦び 猫町UG読書会 [後編]


相互公開装置としての異装

段々と各テーブルが盛り上がり出す中で
隊長のチアキさんにお話を伺いました。

うまーく文学オタク集中が回避されていることについては
「そういう人たちだけの場にしたくなかったし
とはいえ談義がしぼむのもいやだった。
そこでドレスコードで一定の制限しつつ
マスクの匿名性で話しやすくしようとしたの」

各々の参加者が装い、包み隠すことが
相互に裸になるための装置になっている。

また、各テーブルを見回して気付いたのは
参加者それぞれの本の扱い。

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本の帯や表紙も外す人がいれば
書店の文庫カバーの人もいたり
ひとつの文庫カバーの中に2冊を納める人も。

付箋を貼る人にも全編一色の人も入れば
逆にかなり丁寧に色分けする人もいたり。
同じ本がこれだけ様々に使われている
その姿を眺められるのは予想以上に楽しい!

本自体が好きなワタクシには
新たなフェチに開眼する思いでした。

そんな本の持ち方・読み方・使い方が
実に十人十色なことについても伺った所
チアキさん自身いつも課題図書のテーマから考えて
お手製の文庫カバーを作られるそう。

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「わたしの読書会は文庫カバーを作る所から始まるの。
そして、そのカバーと揃いの衣装も自分で作るの」
という格好よいエピソードを頂きました。

聞いて、語って、また聞いて。

どんどんと作品の中へ。
他では味わえない体験。

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盛り上がる程にと時はあっという間に過ぎて
ここからは、今回のベストドレッサーの選出。

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素敵な装いを見つけて、見つめて、見とれて、認める。
これもまたナカナカにフェティッシュな作業であります。

杏美月さんは隠した素顔と隠し切れない品格を評して
「清潔な年配の方と仮面の組み合わせは、なんかエロい」

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「彼氏に突然マスクを渡されてつけちゃったけど、好いかも…」
なのでマスク以外の衣装はあえてのフツーという
作り込んだ設定が活きた方など。

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水嶋かおりんさんは和装と緊縛を上手に組み合わせた女性を。

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鈴木淳史さんは自作のマスクの男性を。

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小沢カオルさんに選ばれたスケキヨさんは
わざわざ冥府からお越しとか。

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壇上にはベストドレッサー。

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普通の読書会にはない景色。

自己没入装置としての舞台

昂揚感の上昇気流が渦巻いた空間に
再び訪れたのは若林美保さんの舞台。

暗くなった舞台はどこか雪の降る遠い国を思わせて
そのままわかみほワールドに雪崩れ込んでゆきます。

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一気に変わる空気の温度。

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ふたつの想いなのか
ふたりの身体なのか
だれかとだれか
なにかとなにかが
惹かれ合っては引き裂かれ
混じり合っては引き千切られる。

肌は縄を
縄は肌を
相求める。

音と光と動きが織りなす混沌。

渾身で引かれた命綱は
かえって己に食い込む。

肌と髪

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光と影

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泣くか
笑うか。

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指の先は震え、怯えているのに
胸の先は求め、裏腹に硬く尖る。

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張り詰め、のけぞり
求めては、逃げて。

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逃げては、また捕われる。

はだけた緋とのぞいた白。

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真っ白は真っ赤の中に染まりゆく。
真っ赤は真っ白の内に果ててゆく。

緋色の襦袢の中では
真白い腿がおののく。

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純白と深紅との契り
悲壮と優美との結び。

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か細い腰に、なお細い朱い縄。
腰にかかった縄の下には太腿。
膝を上げ、脛を振り、足首を通じて、最後は爪先へ。
蹴り出し、先へ伸ばし、叶わず空を切る。

逃げ出そうとしているのだろうか
縋りつこうとしているのだろうか。

縄打たれては海老反り
鞭打たれては仰け反る。

天と地の間に、真っ逆さまの磔。

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搔き抱くのが男なのか。
包み込むのが女なのか。
その逆だって浮世の常。
影絵の中では同じもの。

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のしかかる。
うけとめる。

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帰る所などどこにもないのに
逃げ惑うては連れ戻される脚、肢、足。

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やがては静かに力尽きて、幕。

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目の前で、ただ一人の女が音に合わせ身体をくねらせている。
突き放したつまらない言い方をすれば、それだけのこと。
でも、じゃあなんでそれっぽちのことを眺めているだけで
こんな気持ちになるんだろう。

確かに、言われれば裸の女性が踊るんだから
ストリップと言われれば、立派にストリップ。

だけど、だとしたらストリップと呼ばれる踊りの全てが
男の下腹を堅くするためだけの使い道じゃないってこと。

自分の本心を目の前に曝け出して来て
こちらの本心を求めるような生々しさ。

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零距離の切っ先で自分自身の心性を
まざまざ突きつけられた思い。

若林美保 部分/撮影 寺田 幸弘 【Facebook

時計の針と大団円

最後は各テーブルの方が自由に行き来しての意見交換。
更に更に会場は高揚して活発になってゆきます。

宗教人類学者 植島啓司氏をして
「フレンドリー」
と言わしめたこの猫町UG読書会。

ワタクシが付け足すとすれば
「ラブリー」
でありましょうか。

読書はラブリー
交流もラブリー
それをリンクさせる猫町は
さらにラブリー

フェティッシュでいることはラブリー
その人らしくいることはラブリー
人はそれぞれにラブリー

読後感に代えて

一部が終わって、二部の懇親会が始まる前。
参加者の皆さんに伺った事で
ワタクシはちにとって意外だったのは
”ひとり”で参加する方の多さ。

「谷崎が好きだから」
「もともと猫町に参加して楽しかったから」
「マスクを着けてみたかったから」

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など文学的向学心から変身願望まで
様々な理由で参加されてましたが
みなさん、とても満足されたご様子でした。

「今回は一人で参加したが、同じテーブルに
全く別の趣旨の全く別の催しに参加した人がいた」
などという奇跡の再会も猫町ならさもありなん。
「他の読書会にも参加しているけれど
ここは意見が混ざり合うようにとてもよく練られている」
という、参加してみての実感を伴ったコメントもありました。

また、もうひとつワタクシが感じたのは
”人の「考え」にふれること”の楽しさ。

ワタクシ、00年代からいわゆるナンパをして来ております。
とにかく昔から自分自身の直接体験や皮膚感覚を信じるタイプ
SNS、ブログなどはかなりニガテ。
それでもこの同時代に生きてるいろんな人と
たくさん話をしたいと思い
超アナログな方法論、町で声をかけ
異性/同性問わず知り合って話をしようと決意。
その出会いを楽しみとしてきたワタクシにも
共感できて満足できる内容でした。

どの課題図書も、どのテーブルも
毎回楽しいな、そんな実感と予感。

自分じゃない姿になって
自分そのものを曝け出す。

全員の記念撮影も和やかでいて異様。

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取材でお邪魔したくせに楽しくて仕方ない時間でありました。

楽園を去りながら

一冊の本から、たくさんの言葉、思索、切り口、連想が生まれ
それらがすべてまた元の一冊に向かって集約され回帰してゆく。
何やらそのウロボリックな構図に二匹の蛇を思い浮かべます。
そういえば、智という禁断の実を最初の人間に齧らせたのも蛇だった。

行と行の間、章と章の間
膝と膝の間、襞と襞の間

狭いのに広がりゆく
禁断の智の愉悦。

智はフェティシズムの
αでありωなのかも。
それもまたウロボロスのよう。

分かり合うことの祭
分かち合うことの宴。

未知と蜜の溢れる密室の中で
智のいいなりになる楽しさ。

縁は書でもつ 書は縁でもつ
尾張名古屋は猫でもつ

とは、古い歌にも歌われたもの。

名古屋で始まった猫町倶楽部とその読書会が
今度はお膝元の名古屋で開催されるとのこと。

次回、ご一緒にいかがでしょうか。

猫の町は此処にある

●猫町UG TOKYO
6月21日(日)
新宿ロフトプラスワン
課題本:近日発表!お楽しみに!!
ゲスト:若林美保(モデル・女優・パフォーマー)

●猫町UG NAGOYA
6月27日(土)
新栄Live & Lounge Vio
課題本:ポーリーヌ・レアージュ「O嬢の物語」
ゲスト:植島啓司(宗教人類学者)
若林美保(モデル・女優・パフォーマー)
永遠嬢(女王様・緊縛講師)

お問い合わせは猫町倶楽部へ
http://www.nekomachi-club.com/

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hachi

孤児なので人と話せることを喜びます。

あいまいなもの、古いもの、「自己顕示欲の少ない人・引っ込み思案な人の告白」や「懺悔」が好き。
そんなお話を聞かせて頂ける方や作品のヒント・モチーフとなって下さるモノ・コト・ヒト自薦も他薦も大募集です。
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