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あの町の中にだけそれがある 猫町UG×東京藝術部『会田誠を読む』[後編]


【前編】より引き続きまして
猫町UG×東京藝術部 読書会レポートです。

ここから、一鬼のこさんのショーが始まります。
見蕩れてしまうばかりで手元に画像がありません。

ですので今回のヒロイン七菜乃さんが書かれた当日の記事
【猫町クラブありがとうございました!】をご参照ください。

鬼が犬を連れて 召使いが夜を連れて

暗転した夜が訪れて。

燕尾服の紳士と黒髪の召使いとが
何やら四つ足の真白い犬のような
見た事のない生きものを連れ来る。

よくよく見やれば、それは少女。
包帯も、素肌もひたすらに白い少女。

ただ、本当ならすべすべと伸びている筈の
腕と脚とが、途中から全て断たれている。

どんな運命で、その姿に成り果てたのか知れない。

雪は全てを覆って白く
月明かりは炯炯と青く
花びらは傷口程に赤く

召使いは何を思って微笑みを浮かべるのか。
紳士は誰がためにこの贄を捧げているのか。

空中に掛かる縄と包帯から作られた
蜘蛛の巣に絡め獲られた少女の供物。

腕が断たれた、脚が落とされたという
そんな下卑た見世物根性からでもなく

そうした人間の持つ残酷さや
そうされた人間に宿る弱さを
説教臭く訴えたいのでもない。

その無惨たらしい姿かたちの中にも
美しさはちゃんとある、ということ。

「残酷なのに美しい」でもなく
「酸鼻だから美しい」でもない。

ただの「美しい」

だからこそ

まっすぐに琴線に触れて来るし
まっすぐに決断を迫っても来る。

「あなたはそれを美しいと感じるか」と。

おそろしい、おぞましい、目を背けたい
そんな存在の中にも美しさはあるのだ。

言葉を換えて考えると、自分とは相容れない他の存在を
その傷とともに愛することが出来るのかという問いかけ。

そういう問いとそれに対する答えを、一言も用いず
静かに美しく分かり易く示してくださいました。

チアキ隊長はこの時、涙を浮かべてました。
皆様の胸のうちに灯る答えは何でしょうか。

・紳士 一鬼のこさん【twitter:@hajimekinoko】 【Website】
・犬 七菜乃さん【twitter:@nana7nano】 【Blog】
・召使い 若林美保さん【twitter:@wakamiho】 【Blog】

あらためまして大きな拍手を。

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伝わる言葉に思う

ワレワレ、FetiTokyo編集部
間隙を縫って、感激を持って
会田さんにお話を伺える
大切な時間を頂きました。

会田さんは真摯に
言葉をたぐりつつ
ビールも飲みつつ
お話してくださいました。

短い時間の中で、稚拙なワタクシの話術では
深いお話を引き出すことは出来ませんでしたが
ひとつの言葉をここでご紹介したいと思います。

ワタクシが思っておりました、今回の読書会の面白さでもある
「著者と一緒に書かれた本のことを話せる機会」は滅多にない
今回は大変に貴重で心躍る機会です、というお話をしたところ

「でも、われわれ現代美術家というのは
 会おうと思えば、他の表現者より容易です。
 個展などに在廊もしますし」

という言葉が返って来ました。

なるほど。

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こちら側からするとやっぱり遠い存在に思えてしまうけど
当の会田さん側からすると、そこは垣根のない想いのよう。

その言葉からあらためて思い至ったことは
「やっぱり好きなら行動してこそ」だなと。

至って当たり前のことなんですけれどね。
日々に振り回されると忘れちゃうもんです。

せっかく、同じ時代に暮らしていて
せっかく、好きになったものがある。

なら、その好きに向けて
自分から行動してみたら
もっと好きになれる。
もっと大切に思える。

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この猫町UG読書会に参加されてる皆様は正にそう。
行動の結果、ここに集まっておられるワケです。

そう思うと、好きに向けてグイグイ追い求める
この猫町UGに参加されてる方々って凄いな。

本日ご参加の皆様は会田さんのファンでらしたり
あるいはこの猫町倶楽部自体のファンでらしたり。

とすれば

ワタクシはこの猫町に参加して
何を楽しいと思うのでしょうか。

ワタクシはこの読書会に参加されている皆さんや
その皆さん各々の楽しみ方に触れるのが好きだな
つまり参加する方のファン、そう思い至りました。

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猫町にご参加の皆様の如く好きなものに素直に
どしどし突き進めるようになりたいものです。

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そんなことを思いました
今回の猫町UG読書会。

今回の記事画像につきましては
カメラマン寺田 幸弘氏【twitter:@fatboy_yuu】 【Facebook】から
快くご提供を賜りました。
こちらにも感謝と拍手を。

そんな感慨を抱いているうちに
新宿ロフトプラスワンでは一旦
幕の時間とあいなりました。

昼前から始まって過ぎると夕方。
あっと言う間でしたが猫町は
そのまま雪崩れ込むように続きます。

しかも、この後は懇親会が開かれ
夜の新宿をおにぎり仮面で練り歩き
さらに続いてクラブイベントまでと
時間と身体と感覚総動員の一日。

帰りがけに今回の取材に同行した
弊Webライターアマゾネスいとうが
「やっぱり取材するより参加したい」
と語っておりましたが全くその通り。

参加することが抜群に楽しいんです。

振り返っては沸き起こる

今回、すごく悩んだのですが
会田さんのトークショー部分や
各テーブルでの意見交換の言葉に関して
極力、直接記載することは避けました。

一度は、全体を文字に起こしてみたりと
色々検討致しましたがほぼ削りました。

今回の猫町UG読書会の中での会田さんのお言葉というのは
申し込んで、課題図書を読んで、当日に参加された方々
行動した方だけが触れることの出来るものだと思ったためです。

あとは、なんとなくフェチくないなと。
この猫町UG読書会の中だけで得られたお話を
べらべらとさも知ったように歌うというのは
なんだか随分無粋極まりない振る舞いだなと。
そこにはフェチがない、と言いましょうか。
つまり開く宴より、秘する花です。

ただ、ひとつ言いおいておきたいとすれば
実際に猫町に参加された方々よりもむしろ
中途半端に会田さんの作品を見知っていて
その断片からキワモノ扱いしてる方にこそ
是非聞いて頂きたいような内容でした。

作品や本のタイトル等から誤解されやすい部分かと思いますが
会田さんの言葉は、死と血と精子の匂いのする発言ではなく
とても理知的で社会的、同じ時代の同じ国を生きる身として
素直に共感出来る考えでした。

「基本、語感の中で視覚を一番重視する。
 だから、直接手を出すより距離を取って眺めているタイプ。
 そして、眺めるにも中学生ではなく25歳以上が望ましい。」

なんてな言葉は、そういう中途半端に
会田さんを知ってキワモノ扱いする
善良な皆様が有するであろう人物像とは
まるで正反対の言葉だと思います。

自分にとって「良い」と感じられること。
自分にとって「悪い」と感じられること。
実際に言葉に触れて、自分で考えて決める。
実際に行動して、初めて自分の考えになる。

ワタクシも今回、会田さんにお会いして
思い違いをしている部分もありました。

こんな風に、ひろく様々な方々にこそ
参加して頂きたくなる猫町の読書会。

猫町に携えて来たもの。
猫町で分かち合うもの。

猫町で深まるもの。
猫町で変わるもの。

そういう、猫町にしかないもの。
この町の中にだけ、それがある。

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以上、此処迄の御拝読と御愛顧に
深く深く御礼申し上げます。

猫町倶楽部のこれから

他では出来ないこんな読書体験を
あの手この手で用意する猫町UG読書会。

本と猫と仲間がお待ちしております。

今後の予定はこちらから。
【今後の開催スケジュール一覧】

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hachi

孤児なので人と話せることを喜びます。

あいまいなもの、古いもの、「自己顕示欲の少ない人・引っ込み思案な人の告白」や「懺悔」が好き。
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