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制作者八郎さん(Twitter: @88Chicken8888)とのコラボで、鶏肉グラビアを撮ってみた……その結果を見せる前に、そもそも、鶏肉がなぜインパクトのある被写体になるかを考えてみたいと思います。
(撮影: 八郎)
鶏肉グラビアで使われる「鶏肉」は、頭部が落とされた全身です。
鶏肉の頭部は、水煮(筆者の小学生時代は、ペットショップで売っていました)などの加工品を除き、日常生活で目にすることは稀であり、食材として売られている豚の頭部は店舗で見かけることは稀です(業務用スーパーや、沖縄の市場等は除く)。
また、牛についてですが、頭部がその加工も含めどうなっているか、不明な点が多くあります(調べたところ、牛の頭部は、ほほ肉と舌を取り除いた後、BSE対策で焼却処分とのこと。参考: 東京都中央卸売市場食肉市場・芝裏と場ホームページ)。
ゲイハルター監督『いのちの食べ方』(2005)でも、電気ショックで安楽死させられる場面や、食肉として加工されるため、背割りされる場面がフィーチャーされ、頭部の行方については写されていなかったという記憶があります。
鶏肉の親近感と形状的特徴
鶏肉の利点としては、牛や豚といった代表的な家畜に比べ極めて小型であるほか、クリスマス・シーズンになると、スーパーの精肉コーナーや商店街のお肉屋さんの店頭といった日常的な生活空間で、調理前(色白)・後(こんがり小麦色)の鶏の丸焼きを目にすることが多いため、親近感を抱きやすいということがあるかしれません。
例えば、豚の頭を使って鶏肉グラビア的な作風を撮ろうとしたら、愛らしい雰囲気はでず、ホラー的な要素やバッドテイストが強くなり、鶏肉グラビアほどの支持を得られないばかりか、より強い批判に晒される可能性が考えられます。
(撮影:八郎)
形状により深く着目してみると、鶏肉は丸みを帯びた流線型のため、それを女性の身体的形状と重ねやすいことも頷けるでしょう。
これは余談ですが、人に安心感・親近感を与えやすいキャラクターの形状には、「丸み」が重要であり、その最も代表的例が世界各地で人気を博している「ドラえもん」だという話を聞いたことが有ります。
形状が誘発するジェンダー・イメージ
鶏肉グラビアを撮ってまず驚かされるのはボディライン。
鶏肉モデル自体の生物学的な性別は不問にされるのですが、その形状や、写真として切り取った際に感じる印象が、ジェンダー・レスであっても良い鶏肉を、女性表象に誘導させられてしまうことに気づいてしまう人は少なくないでしょう。
「鶏肉グラビア」の代表的な作品として、浜辺で波と戯れるものがあります。
(撮影:八郎)
この写真は「鶏肉グラビア」という名称があったからこそ、「鶏肉」と「グラビア」という、解剖台に乗せられた蝙蝠傘とミシンにも似た、出会うことのない2つのイメージが、作家の閃きを遙かに凌駕する形で拡散し、様々な意見や解釈を誘発する相乗効果を生み出したのでしょう。
(撮影:鈴木真吾)
次回はようやく、八郎さんとのコラボ撮影から、筆者が写した鶏肉グラビアについて、作例解説を絡めてご紹介していきたいと思います。
画像提供:八郎

鈴木真吾
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