はじめまして。都内でサラリーマンをしながら「ふたなり」の創作活動をしています不知火(しらぬい)という者です。
「ふたなり」という分野をご存知でしょうか?男性器のついた女性の姿の人物表現のことで、エロ同人誌などで良く描かれます。ふたなりはとても奥の深い分野で、海外でも「FUTANARI」として親しまれています。今回は「ふたなりって何?」という方のために、私の知る範囲とはなりますが、解説をしていきたいと思います。
「ふたなり」とは?
ふたなりとは、女性の体に完全な形、機能を持つ男性器、陰茎と睾丸を備えているという設定の人物表現のことを指します。女性器も完全な形と機能を備えています。とても簡単に説明すると以上で、実際にある事柄や人物(医学用語方面の両性具有、トランスセクシャル、性転換など)ではなく完全な創造物です。
ふたなりと言う名の通り二つの性器を持っていますが、中間的な存在と言うよりは、かなり女性よりです。股間の性器部分以外の体つき、言動や性格はまさに女性そのままです。
※ここに関しては、私の描くふたなりとは異なる点は多いのですがこの最初の重要な部分だけはなるべく中道な事柄にしました。
「ふたなり」は日本で独特に発展した
一つの体に二つの性のを持つ存在の話は世界中の伝説や宗教にありました。古代ギリシアの哲学者プラトンのいうところの男女がまだ分離する前の状態のアンドロギュヌスと言う原初的存在、さらにはギリシア神話の男女が結合したヘルマフロディトスという後天的に男女の性が一つになった存在の物語や概念が古くからありました。
また日本には、歌舞伎や物語として二形や半月と言う言葉で登場することがあり、これらはどちらも「ふたなり」と読まれていました。語源は中国からのものであったとのことです。しかし、現在一般に発展しているふたなりは、これらとは別の起源をたどります。
現代の日本におけるふたなり表現の源流はアニメゲーム系エロ同人誌と言えるでしょう。特に格闘ゲームの女性キャラ、ストリートファイターシリーズの春麗や餓狼伝説KOFシリーズの不知火舞が二大女性キャラです。
引用:http://game.snkplaymore.co.jp/official/kof-xiii/arcade/character/
現代の方向性が形作られたのは90年代中期ごろだと言えます。独自にふたなりの設定を構築し、さらにふたなりのみの世界まで創造する作家があらわれました。そのふたなりの作風もそれまでの表現からふたなりを称賛するような肉体美、筋肉、心地よい豊満な作風で、それまでふたなりを知らなかった人々をも魅了しました。その活動的でポジティブな方向性は現在まで引き継がれ今現在の日本のふたなり文化が形作られた瞬間でもあります。
ふたなり作家Rebisさんより(http://www.dec.sakura.ne.jp/~rebis/)
2000年代に入りさらに作家も愛好者も増え、ついには「ふたけっと」という、ふたなり専門の小規模な同人誌即売会コミケのような単独イベントまで開催されるようになりました。その勢いは国内だけには留まらずもはや世界的な1つのジャンルまでになっています。
なぜ女性格闘キャラのふたなり化が多いのか?
どうして女性格闘キャラが特にふたなり化が多いのか?ここは私自身の体験を書こうと思います。
私も同人誌を描く前にサイトやネット上で多くのふたなりのイラストを見て、自分でもいろいろとイラストを描いてみました。そうしたら・・・とにかくかっこいい!
女性の乳房や性器、臀部と顔や髪の美しさを持ちながら、引き締まった程度の筋肉の堂々とした男性的立ち姿の見事に合体した存在は、観る以上に描くのが本当に楽しいものです。
その上でエロイ同人漫画を描こうとしたわけですが、可能ならば汚い男なんか描かないで、ページの始まりから終わりまでずっと美しく、かつとんでもなくハードにエロイものを描きたくなったのです。そうなったら自然と「ふたなりだけのエロ漫画」が良い訳で・・・。
巨乳、男性的立ち姿、ほどほどの筋肉、体を激しく動かすイメージのある作品のキャラ、激しいセックスをしそうなイメージのある年齢のキャラ、全国区で有名、そんな条件に見合うのは当時流行っていた格闘ゲームの女性キャラしかありませんでした。
ストリートファイターの春麗はまさに初の格闘女性キャラとして未だに根強い人気を持っていますし、餓狼伝説やKOFの不知火舞は、なんとまだ3Dではなくドット表現の時代のゲームにも関わらず初代乳揺れキャラとして衝撃を与え、春麗に及ばないまでも強い人気を持っています。はい、私のペンネームの由来ですね。
学校帰りに通っていたゲーセンで初めて不知火舞のドットの胸が揺れるのを見たときは
「なっ!!!!!」
と衝撃を受けて、みんながストリートファイターで盛り上がっている中、無視して餓狼伝説2とかをやっていました。
(ちなみにKOFの最新作の不知火舞は3DCGでモデリング、アニメーションを付けたものをあとからドット化しているので陰影、質感、動きともに近代稀に観る見事な揺れでした。)
本当に、ちょっと前までは巨根の春麗や物凄いパイズリをする舞の同人誌がいっぱいでした。私も描いていました。
↑最新の乳揺れ(http://game.snkplaymore.co.jp/official/kof-xiii/arcade/character/)
さて、かなり熱く語ってしまいましたが、そのようなわけで、西洋では脇役的存在だった両性具有は日本ではふたなりとして、一つの作品で立派に主役的位置にいる自立した存在として発展してきました。エロ同人誌内では激しい多くの回数の性行為表現が必要なため、西洋の天使の表現にみられる無性(性を持たない)ではなく両方の性を持ち、過剰な性表現のため乳房や性器の平均値以上の巨大化と体全体の女性化が発展していきました。
こうした日本のふたなりは、西洋の哲学や宗教的なもの、日本の衆道や歌舞伎の流れとは違い、ゲーム、オタク文化、エロが合わさった結果なのです。この日本的「ふたなり」は、「FUTANARI」となり世界中に広がっていますから、なんというか感慨深いですよね。
おわりに
「ふたなり」という表現形態、いかがだったでしょうか。このような表現に初めて出会い、驚いた方もいらっしゃるかと思います。一方で、この二つの性を持った存在に強い興味や、表現の可能性を感じて頂いた方もいらっしゃれば幸いと思っています。私も、この新しい表現は自分の人生に今までにない方向を示してくれる神秘的な存在であると期待し、活動しています。
これから皆さんが画像検索などで観る作品の多くはアダルト的表現が多く、やや予想とは違うと感じる方もいらっしゃるかもしれません。それは、ふたなりと言う考えの範囲が広くいため柔軟で活動しやすく、制作者もファンも多い故です。
ふたなりと言う言葉に初めて触れ、このページを見てくださった方々の中に心の中に光を放つふたなり的存在を思い浮かべ、感じ、興味を持った皆様。今後に続くこのコラムにもう少しだけ付き合っていただき、その心の中のふたなりを育ててほしいと願っております。
また、いつか私のふたなり個展にてお会いするなどできれば、と思います。
では次回は以上を踏まえての少しだけ深いお話をさせていただきます。
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