文豪・谷崎潤一郎。明治から昭和にかけて活躍し、『細雪』や『痴人の愛』などの優れた作品を数多く残した小説家として有名ですが、その作品を一度でも手に取ってみれば、流麗な文体の中に匂い立つ、フェティッシュな香りに衝撃を受けることでしょう。お堅い純文学かと思いきや、そこには変態性あふれた、めくるめく世界が広がっているのです。
たとえば代表作『痴人の愛』には、こんな場面があります。
ああこの足、このすやすやと眠っている真っ白な美しい足、これはたしかに己の物だ、己はこの足を、彼女が小娘の時分から、毎晩々々お湯へ入れてシャボンで洗ってやったのだ、そしてまあこの皮膚の柔かさは、ーー十五の歳から彼女の体は、ずんずん伸びて行ったけれど、この足だけはまるで発達しないかのように依然として小さく可愛い。そうだ、この拇趾(おやゆび)もあの時の通りだ。小趾(こゆび)の形も、踵の円味も、ふくれた甲の肉の盛り上りも、総べてあの時の通りじゃないか。………私は覚えず、その足の甲へそうッと自分の唇をつけずにはいられませんでした。(谷崎潤一郎『痴人の愛』より)
生粋の「足フェチ」として名高い谷崎潤一郎ですが、実はそれだけではありません! マゾヒズム、食物性愛、ウェット&メッシー、体液フェチ、百合に寝取られ……「おや?」と思うようなフェチ要素がてんこ盛りなのです。
入門編として『谷崎潤一郎 フェティシズム小説集』(集英社文庫)をご紹介させていただきます。「刺青」「富美子の足」「悪魔」……と、タイトルだけでもぞくぞくする短篇がちりばめられた一冊、ご紹介を通じてまずは教科書代わりにお手に取ってみてはいかがでしょうか。
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尊厳
フードプレイが趣味の文学部生です。谷崎潤一郎と、食事の仕方がきれいな人、きれいなお菓子をぐちゃぐちゃにするのが好きです。
遊んだ食べ物は残さず食べるのを信条にしています。
twitter:@songen_sugoi
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