前回対談はこちら。
好きな人は商売できない。
SUZU 好きな人は商売にできないと思うんですよね。私はさっき言ったように、玄関にガスマスクを飾ったり、あとハイヒールを飾ったりするので、仮面をサイトか何かで見たとき「あーいいなあこれ、居間に飾れば」みたいなことを思ったことがあります。白黒好きなので。
大川原 うちはウェブ上にそれほど露出してないので、画像とかもそれほど出さないんです。主にコレクターの皆様に向けてピンポイントで販売しているので。
SUZU そうですよね。やっぱり人を選びますもんね。うちもそんな感じになってますもん。
大川原 作品としてもモノが大きかったり、持ち運びが大変だったりとか。あとまあ、お値段も割と高価なものがありますから。
SUZU あ、そうなんですね。
大川原 Webに出してるのは、まあかなり、ある意味お手頃価格で。
SUZU あ、そうですそうです。思い切れば「買える!」っていう。どこかのお店で並べてはいないんですか?
大川原 常設ではやってないですね。
SUZU イベント的な感じで?
大川原 そうですね。あとやっぱりコレクターさんのつながりとかで。コレクターの中でも仮面が好きとか、そういうニッチな人たちに、直接出向いて販売をするっていう形ですね。
SUZU 似たような感じですね。やっぱり。
大川原 そうなんですか。
SUZU そうです。まあ昔からの、まとめ買いの方なんかだと。
大川原 そういうひとは、お店とかで使用するためですか? それとも個人で?
SUZU 個人だと思うんですけど…やはりモノがモノなので詮索は無用なんですが。私のわかる範囲では、ご自分で。あとはパートナーがいらっしゃるとか。
大川原 私、すぐにそういうものはオープンにした方が楽しいんじゃないか、と思ってオープンにしたがるんですけど。こないだ緊縛のワークショップもそうですけど、いわゆる緊縛っていう秘匿的な、隠れてるのが美しいみたいなことを企業研修にぶっこんじゃったりするので(笑)
SUZU でもそうですよね、私もそう思うんですよ。なぜ緊縛とかマスクとかを隠すのかが、あまり恥ずかしいと思わないんですよね…たぶんこれは生まれもってだと思うんですけど。SMプレイとかそういうものも含めて。
SUZU まったく思わないです。たぶんこのマスクをして、外に行って写真を撮りましょうって言ってもたぶん私そのまま行くと思うんですよ。「はい、行きます」っていう感じになってしまうんで。でも緊縛のほうだとやっぱり隠れてやりたがるんですか。それとも、ああいうのに参加する人はそうでもないんですか?
大川原 いや、顔出しはナシでみたいなことはやっぱり。その辺りはけっこう繊細ですね。
SUZU やっぱりそうですよね。
大川原 ただ、やってみると体験としてはすごく楽しいというか、まあ面白いので。全然いわゆるエロティシズムとかもほとんどありませんし、なんかこう、和気あいあいと。
SUZU 縛られましたか? どうでした?
大川原 はいもちろん。もともと緊縛で写真撮られる、みたいなことはやってたので。
SUZU ああそうなんですか。じゃあバッチリですね。
マスク人口はまだまだ?
SUZU 私はほら、引きこもりなので(笑)
大川原 イベントとかは行かれたりしないですか?
SUZU 最近はほとんど行っていないですね。エロチカ(エロチカジャポネスク)は2回くらい行ってるんですが、その時は「緊縛かるた」というものが発売されると聞きまして、それを買いに。そのあとは引きこもりの病が…あとはデパH(デパートメントH)とかは時々やっぱり、マスク事情は知りたいので見に行きます。でも、やっぱりまだ少ないですね、マスク人口は。海外のラバーのイベントと比べてはいけないですけど、でもまあやっぱり海外のほうが多いんだなあ、という感じもあります。
大川原 なるほど。ここ数年、マスクというものは盛り上がってきてるんじゃないかという気はしてるんですけど。
SUZU 全身タイツ、いわゆるゼンタイは流行ってきましたね。ゼンタイの方はすごく…
大川原 多くなりましたね、
SUZU いなかったですよね、昔は。でもアレも見てると楽しいですね。カラフルで、みなさんちょこちょこ歩いて。なんか人間じゃないものがいるのがすごく面白いなあと思って。みなさんお話ししていると「着心地が」「肌触りが」って。
大川原 やっぱり手軽なんでしょうかね、ゼンタイっていうのは、わりかし。
SUZU そうですね。やっぱり、ラバーコスチュームを揃えるのに比べると、もちろん。完全オーダーメイド、フルでやってもやっぱり全然安い。
大川原 そうですよね。ずいぶん前ですけどね、高校生のころ、顔まで覆うタイプの全身タイツがどうしても欲しくて。買って、文化祭でずっとそれ着てました。
SUZU でもやっぱりそっちのほうですよね。
大川原 そうですね、やっぱりパフォーマンスとして着てましたね。私の場合。
SUZU 私、ちょっとそういう世界から離れていたので、戻ってきてゼンタイを見たら「…モジモジ君だ!」と思って。なぜこんなに!?と思ったんですけど、最近は本当に多いですよね。すごく楽しそうだなと思って(笑)私は着心地の悪い、ガチガチのものが好きなので。
大川原 やっぱり見た目にはどうしてもこう、(ゼンタイが)見た目を犠牲にするってわけじゃないですけど、ラバーとかガスマスクとかでガチガチにしている姿って、かっこいいじゃないですか。
SUZU いいですよね。
大川原 それに比べるとどうしても、まあちょっとチープにも見えますよね。けどそれが良いのかもしれないし。
SUZU やっぱりマスクは高いですよね、こういう製品ってちょっと被ってみたいと思っても、やっぱり。10000円は越えてしまうので。
大川原 いや、でも安いですよね。
SUZU うーん、だんだん麻痺してきて、マスクだと高いのか安いのかよく分からなくなってしまって(笑)。
大川原 わかります。
SUZU もともと好きなものだけ集めてしまったので、よくわからないんですけども。そう思うと全身セットとかっていうのは、足がかりとしてはいいのかなー、とか。そういう人口が増えるのは楽しくていいかな、とは思います。
大川原 逆に、顔から作っていってほしいですけどね。
SUZU 顔から。
大川原 まず顔、マスクを買って、そこからファッションを作っていくというような。
SUZU こういうのだと何を合わせればいいんですかね?
大川原 どうですかね?
普段これをかぶってどうこうするとか、全く想定されていないので。
SUZU あー、なんかすごく、シャープになるんですね。
大川原 そうですか?
SUZU すごくシャープです。やっぱりマスクかぶるとちょっと薄気味悪くなりますよね。そこが好きなのかもしれないけど。
大川原 表情でコミュニケーションがとれないですからね。シアターの世界だと、やはり身体性の強調とか、そういうトレーニングをしますからね。
SUZU なんか悪い人がいるみたい(笑)おもしろいですね、こういうのも。「フェイスハーネス」とかあるんですが…ただそれはまたマスクではなく、名前が「フェイスカバー」とかになっていくんですが。
大川原 なるほど。
———
SUZU ラバーフェティシズムっていうのはもう、持って生まれたもので。匂い、質感、あとはラバーとラバーが擦れるキチキチ音とか。ただそれってやっぱり興味のない人、わからない人には絶対にわからないと思うんです。これが好きっていうレベルを超えて性的に興奮するっていうのは…
大川原 まあ、人間何にでも興奮できますからね。
SUZU まあそれとは離れたところでもイベントとかで目立つと思うし。途中で死ぬんじゃないかとも思いますけど。
大川原 途中で死ぬんじゃないかみたいな人いません?イベントでたまに。
SUZU そうですね。「大丈夫かしら?」って。
大川原 でも声かけていいかどうか、わからないですよね、ああいうの。
SUZU そうですね。
大川原 「楽しんでる最中だったらどうしよう」みたいなね。
SUZU 遠巻きに。
大川原 なんかね、マスクやフェイスカバー、仮面でもいいんですけど、とにかく私は被るもの、顔をかくすものがたのしいなあと、すごくおもしろいなあとおもって。
SUZU 普通のファッションだとサングラスくらいしかないじゃないですか。顔を隠すもの、顔面をっていうのは。ハイヒールとかコルセットとか、あとウェアはなんとかなりますけど、日常に取り入れることがなかなか難しいアイテムなので、余計にスペシャル感がでるとおもうんですよね。
大川原 最近、ファッションショー界隈で使用する程度ですけど、アイウェアやヘッドドレスのようななもので、顔まで覆うタイプのものが増えてますよね。
SUZU ああ、増えてますね。多いですよね。
大川原 ああいうのが面白いなあと思っていて。テンプルがついていて、サングラスタイプでちょっと顔まで広がりを持っているタイプのものとか。
もしくはヘッドで被せて顔まで広がってくるタイプとか。ウチでもああいうタイプのものを作れないかなと思って。
SUZU これで作ったら面白いですよね。
大川原 つくりません? 作家がいるので、(仮面を)作れるんですよ。
SUZU でも、私がやったらガスマスク風になりますよ。
大川原 一緒にやりましょう。
SUZU そうですね。ちょっと面白いのもやりたいなとは。
大川原 これは粘土なんですけど、FRPとか、まあいろいろ、素材とかはたくさんあるので。
仮面造りの裏側
SUZU ちょっと造りについて聞いてもいいですか。
大川原 どうぞ。
SUZU こういうのって、一枚ずつ作るんですか、それとも、型をとって作っていくんですか。
大川原 ここにあるのは一枚ずつ作ってますね。もちろんモノによっては型をとって、そこに樹脂を流し込んで作るのもあります。
SUZU 一番はあれですよね、貼り合わせで立体にしていく形の。一方ではもちろんこういう種類のものでも、型で作るのもあるんですよね。でもこれは、型っぽいけど型じゃないんですね。一枚ずつこういう形に仕上げてつくるんですね。
大川原 そうですね。
SUZU 貼り合わせるということをしないのはいいですね。型で作るというと、そもそもの型を作らなきゃいけないので、結構な金額になる。でもこういう貼り合わせじゃないものを一点ずつ作るっていうのは、すごく面白いですよね。
大川原 ラバーでもいわゆるオーダーメードで貼り合わせじゃないのもある?
SUZU はい。オーダーメイドではなく既成のもので、キャスティングという一枚のものもあります。
大川原 あ、そうなんですね。
SUZU そうするとラバーの厚みが変わってきて、選べたりもするんです。
大川原 ラバーの厚みって、どの程度が良いんですか?
SUZU 好みですね。ヘビーな方だとかなり厚いもので2mmとかありますし。0.5mmくらいだと、伸びが良くて被りやすいかなと思います。ほんとに、好みなんですよね。マスクっていう狭い世界の中ですけど、みなさんが好きなものがあちこちの方向を向いているので、括ることが難しい。
大川原 わかります。でも私はそういう中でね、みんな仲良くしてほしいと思ってて。
SUZU そうですね、みんな仲良く。私も色んなものがあったら楽しいかな、と思います。ジャンルとして括るのは難しいですよね。
大川原 私がアートの文脈でお面を売ったりしている一方で、たとえば、また別の文脈ですけど、狐のお面が好きな方とかもいますからね。
SUZU 狐ね、はやってますよね。あと犬とか。
大川原 犬は、扱ってらっしゃるんじゃないですか。
SUZU 増えてますね、すごく。私が扱ってるメーカーさんとか、現在ほとんどソールドアウトですね。私も予約をして、前金で払って待ってる感じですね。「なんでこんなに…」というような。世界的な流行なのかもしれないですけど。
ワンちゃんは増えているんですが、例えばジャガーとかも増えてます。個人的に買う分にはいくら納期がかかっても構わないんですけど、最近のパターンとしてよくあるのが、買うと見せたくなるのでTwitterとかでサイトにアップする前にちら見せするんです。
するとお問い合わせが来てしまって…人気なので納期が3か月必要とかってざらなんですが、お客さんに3か月待ってくれとはなかなか言えないので、自分のものを流してしまって…。あと送料がかかるので後でまとめ買いしようと考えているうちになくなってしまったりとか。
ジャガーとか猫とかすぐソールドアウトが出ているという…動物、強いなあ(笑)ないんですか、ペット系とか。
大川原 サルはありますね。まあそこそこ売れていますけど、バカ売れしているってほどでは。でも動物系はやっぱり波が来ている感じがありますね。
SUZU 来てますね。でも波が来たころには出遅れていて、まあいいや、みたいな。私はガスマスクで行くので。
大川原 本当にお好きなんですね、ガスマスク。
SUZU そんなに詳しいわけでもないんですけどね、なんかやっぱり、この子がいちばん好きなんですよ、PBF。好きで好きでたまらなくて、生まれ変わったら、PBFガスマスク屋になりたいって。
大川原 現在もそうですよね(笑)
SUZU 言われますけど、PBF一本はやはりきついので。ガスマスクって機能性だけを考えて作られていると思うんですが、ロシアは素晴らしいデザインのものがすごく多いので。
大川原 ロシア素晴らしいですよね。最近の愛好家の人たちは、フィルターとかは全く着けないんですか。
SUZU フィルターも付けますね。ただまあ全部期限切れなので、付けたままのかたもいますし、邪魔なので中抜いちゃう方もいますね。PBFに関しては、なかなかフィルターが付いているのは見つからないですね。
大川原 フィルターだけ売ってたりするのもありますよね。
SUZU まあ他で売ってるのでうちはいいかなと。もともとフェティッシュマスクのほうが強いので、ガスマスク小物とかはあまり扱ってないですね。
大川原 国内で同業者さんはいますか?
SUZU マスクメインは…あまりいませんね。ただ私は引きこもりがちなので、知らないだけかもしれません(笑)他を見ると、マネしてしまうんですよ。引きずられやすくて…あ、いかんいかんと(笑)なるべく他は見ないで、自分の好きなものを集めるようにしてますね。犬が目につくと犬を買いたくなるじゃないですか、犬が好きかどうかよくわかんないままに。その辺りは常に気を付けています。
大川原 私も普段「同業者とかいるんですか」とか聞かれるんですが、半分冗談で「シェアNo.1です」って言ってますね。需要もまあ、決して多いわけではないですからね。
SUZU 「そんなにいてたまるか!」って感じですよね。
大川原 すごい売れても困るけど、他の大手が入ってきても困るし…みたいな。
SUZU マスク人口、少ないですよね…なんだかしんみりしちゃいましたが。
大川原 ただ、私はもう疑いなく口に出せるんですが…マスク文化はこれから根づいていく気しかしてません。
SUZU そうですよね。今までよりはファッション等で使用されて、人の目に触れる機会が明らかに増えていますから、来るんじゃないですかね。
面白いですよ、お客様と話していると「こういうものは、みんながしていないから良いんだ」という方がいらっしゃって。
大川原 ああ、そうですよね。
SUZU 私はそういうものを理解する人とか、好きだと思う人が増えればいいなあとは思います。
大川原 そうですね。まあ私も正直言って、自分でコレは素晴らしいなと思うマスクって、自分で買いますからね(笑)
SUZU そうですよね。
大川原 売らないですからね。
SUZU 私も私物はいいかげんにしろ、って他のスタッフから言われます。
大川原 スタッフさんは、何人かいらっしゃいますよね。
SUZU そうですね。でもみんなほかの仕事しながらやってます。やっぱりそういうものを面白いと思ってくれる人が手伝ってくれてる感じですね。お一人なんですか?
大川原 私は一人です。プロジェクトベースで人を集めたりはしますけど、基本的な作業は一人でやってます。
SUZU 私もそんな感じです。
(仮面を被り)これを被って演技するって尋常じゃないですね。
大川原 そうですね、だから専門的な訓練が必要なんですよね。
SUZU いや面白い。ぜひ一緒にマスクの展示即売会とか、やりましょう。
大川原 ぜひ。今日はありがとうございました。
SUZU こちらこそ、ありがとうございました。
イベント告知
「TOKYO MASK FESTIVAL vol.1」
日本最大級のマスクの展示即売会。マスク好きによるマスク好きのための祭典。マスク、覆面、仮面、かぶりもの、着ぐるみ、ヘルメット、オブジェクトヘッド、異形頭、甲冑、プロテクター、ゴーグル、その他なんでもありのオールジャンルイベント。
※仮装でのご来場は大歓迎ですが、更衣室はございませんので予めご了承ください
日程:2015年 8月1日(土)
開場:12:00 閉場:20:00(再入場可)
一般入場料:1000円
※小学生以下は入場料無料(保護者同伴必須)
場所:秋葉原ハンドレッドスクエア倶楽部 東京都台東区浅草橋5-3-2 秋葉原スクエアビル7F
公共交通機関からのアクセス
1. JR山手線、JR京浜東北線「秋葉原駅」昭和通り1番出口…徒歩7分
2. JR総武線「浅草橋駅」西口…徒歩5分
3. 都営浅草線「浅草橋駅」A4出口..徒歩6分
4. 都営新宿線「岩本町駅」…徒歩9分
5. つくばTX線「秋葉原駅」昭和通り口…徒歩7分
6.日比谷線「秋葉原駅」1番出口…徒歩7分
7.銀座線「末広町駅」…徒歩12分
8.大江戸線「新御徒町駅」…徒歩11分

大川原脩平
shuheiookawara.com

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