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「蕎麦屋では蕎麦を出すでしょ。蕎麦屋でフレンチが出てきたらびっくりするじゃない。私はその場で求められるものを出しているだけ。」
公演後お話を伺った際に聞いた有末さんの言葉は、ストンと心に落ちてきました。サングラスの奥はきっと、優しい目をしていたんじゃないかなぁ。
7月12日に緊縛師・有末剛さんのイベント「緊縛夜話 路地裏奇談」(大川原さんの告知記事)にお邪魔してきました。路地裏の多い街阿佐ヶ谷で、溶けるような暑さの夕暮れ時の公演です。

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劇場のザムザ阿佐ヶ谷は古材と土壁でできたノスタルジックな地下の小劇場。140の客席は老若男女で満員で、お子さん連れの方もいらっしゃって「フェチの英才教育やぁ!」と感銘を受けました。
劇の感想をたらたら書くつもりは無いんです。いえ、すみません盛りました。書けない、が本音です…。観終わった直後、「どうしよう…!何をレポしたらいいの!」と頭を抱えたのが事実。
だってだって、「路地裏奇談」っていうからストーリーテラーが何か話すような、そんな稲○淳二的なものを勝手に想像してたのに、出演者の方々は誰一人なにも話さないし、ただ笑ったり無表情で踊ったり縛られたり、とにかく不気味で奇妙。「わからない」がいっぱい。『ドグラマグラ』くらい、わからない。

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でもそのわからない、の空間の中に有末さんという確固たる存在がいて、縛りというものがあって。あのえも言われぬ説得力と安心感が空間に意味を持たせている気がしました。
とはいえダンゴ虫と同じ脳みそサイズの私には難解すぎる~と弱音を吐きながら公演後の懇親会(出演者や有末さんとお話しができる!)で出演者の方に泣きついたところ、
「わからないでしょう(笑)お客さんの一人ひとりがストーリーを見出してくれればいいんです。僕も初めて縛られたんですけど、アートというか肉体のオブジェというか。エロじゃない緊縛もあるんですね。」と。
す、救われた…!

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また、抽選で選ばれたお客さん3名を連続で体験緊縛として美しく縛り上げて(羨ましかった)、公演からほとんど休みがなくお疲れであろう有末さんに今後どんな活動を考えていますか、と聞くと
「緊縛という一見マニアな世界をもっと色んな形で色んな人々に、裾野を広げていきたい。ガラガラポンみたいに、色んなジャンルと混ぜてさ。」とおっしゃっていました。
そして冒頭の言葉。混ぜたとしても、エロにはエロの緊縛、アートにはアートの緊縛。縛りの可能性は無限大だなぁとつくづく納得いたしました。

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帰りの電車の中で、「わからないなぁ~」と思いながら演出家の大川原さんのツイッターを見たところ、
あしたは「緊縛夜話」ゲネプロでございます、:-> さくっとみられて「よくわかんなかったね、:->」とかえりの電車でほほえみあえるような朗らかな舞台になりますように、:-D
— 大川原脩平 仮面屋 (@shuhei_ookawara) 2015, 7月 10
とあってほっこりしました。
「わからない」からこそ「奇談」は成り立つし、観劇後の「わからない」という気持ちは、路地裏のあの異空間のようなところに迷い込んでしまったときの不安な感情そのものに似ているような気がします。
今後もどんな新しい世界を魅せてもらえるのか、わくわくしながら待ちましょう。

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次回、緊縛夜話第十一夜は11月29日(日)
次回は緊縛×演劇、演出はプリンレディ主宰の美貴ヲさん(twitter @mikiwo65)女の心を独自の切り口で描きます。
ドロッドロの女のドラマに、緊縛の慈愛と解放を・・・女の心を独自の切り口で描く美貴ヲさんの世界にご期待ください!
最新情報:有末剛さん 緊縛夜話 Facebookページ
https://www.facebook.com/a.kinbakuyawa
写真提供:© GO (go-photograph.com)

アマゾネスいとう
好物はオッサンとヒゲとガスマスク。陶芸やストリップ鑑賞が趣味。
ポジティブすぎて無理、と振られたことがある。
Twitter @rakuten_ha

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