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第2章 フェティシズムは、未来にとってどうあるべきなのか


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© TONY / Libido M&J 2009 2015

こんにちは。大森弘昭です。
前回、私の人生に今でも大きな影響を与えている先人が残した、二つの言葉を示しました。
今回は、フェティシズムを理解する上で非常に重要な、この二つの言葉についてお話ししていきましょう。
「一人家元」
まずは一つ目。
ライターとして活躍されている下関マグロさん。
ウエット&メッシーの世界でも特に『パイ投げ』の分野におけるスペシャリストで、ご自身もパイ投げをテーマとした映像作品を非常に多くリリースされました。
そんなマグロさんが、とあるところで書かれていた一つの言葉が「一人家元」です。
家元とは、
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/家元
芸事などにおいて、家伝として承継している家系、及びその当主のことを指します。
下関さんは様々なフェティシズムの分野に関わり、またご自身の持つフェティシズムを掘り下げているうちに、あることに気づいたそうです。
それは、

同じ分野のフェティシスト同士でも各々の嗜好や方向性に差があり、全くと言って良いほど『100パーセント嗜好が合致したフェティシストの対(つい)』は見つからなかった。

・フェティシストは自分の嗜好に強いこだわりがあり、上記の差がわずかなものであっても、その些少の違いを理由に議論に発展することもあった。つまり、フェティシスト同士は嗜好の違いを『譲ろうとしない』

ということでした。
これを、芸事などでよく発生する「御家騒動」や、流派が分裂していきつつも同じ分野にて距離を保ちながらある種の共存をしていく様、そして、その流派チックな『所作の違いであるかのような各々の拘りの強さ』から、
フェティシストは、一人一人が家元のようなものである
と言い表したのです。
20代半ば、私はこの言葉を初めてご本人の口からお聞きした時、『確かにそうだ!』と感嘆しました。

そうなのです。確かに、みんな、ちょっとずつ違うのです。さらに、(しようと思えば)フェティシスト同士でどこまでも各々のフェチの違いについて深く議論ができるんです。これも全く一致していました。ケンカにまで発展することはそうそうありませんでしたが、議論が白熱するなんてしょっちゅうでしたから、下関さんのこの言葉は、私にスーッと染み込んでいったのでした。

「フェチはフェチの上にフェチを作らず、フェチの下にフェチを作らず」
続いて、二つ目のお話をしましょう。
私には、師匠と仰ぐ方がいます。
全身タイツフェチの世界をいち早く世界に向けて提唱し、我々の活動における基盤を作って下さった創造主。
マーシー・アナーキーさんです。
彼の存在が私をこの世界へと導き、彼のフェチに対する思想は私の礎となりました。
もし彼と出会えなかったら、私はここにいないでしょう。それほどのお方です。
そんなマーシーさんが、パソコン通信の時代から絶えず言及していた一つの言葉があります
「フェチはフェチの上にフェチを作らず、フェチの下にフェチを作らず」
福沢諭吉のパロディーですね。
しかし、このパロディーには非常に大きな意味が込められています。

彼が言いたかったことはこうです。

・フェティシストは一人一人それぞれで方向性が違うが、その間に上下関係は発生しない。どちらが上でどちらが下だということもない。フェチに貴賤はない
・フェティシスト同士に違いが存在する上で貴賤がないのだから、フェティシスト同士が相手を理解しあい、その存在を認め合うべきである。違いを認め、存在を認め合うことで、互いに尊敬の念が生まれ、初めて紳士的な関係性を築くことができる。
だいぶ昔の話なので、私の中で思い出補正のようなものもかかっているかもしれません。
ただ、私はマーシーさんからこの言葉をお聞きするたび、以上のような理解をしていました。
そしてそのたびに、私はとても大きな感銘を受けました。
「なんてフェティシズムという世界は素晴らしいのだろう。
こんなに素敵で紳士的な関係性を築くことのできる世界が、他にあるのだろうか?
フェティシズムという、性的嗜好ーーいや、性癖って言い切っちゃいましょうーーが生み出した事象なのに、やってる本人たちは至ってクソ真面目で真剣で、それでいて、先輩とも後輩とも先生とも生徒とも友達とも違う、全く別次元のレイヤーにある強固な関係性でつながっているような、とっても不思議な感覚でした。
これからのフェティシストに必要なこと
私がこの二つの言葉を聞いてから、もう20年の月日が経とうとしています。
この二つの言葉の真髄を、我々が改めて噛み締めるべき日がついに来たように、私は強く思います。
はっきり申し上げまして、急務です。
並大抵のことではありません。この言葉を我々が今の時代に残せたのかといえば決してそうではありません。であるがゆえに、一人でも多くの同胞たちに伝える必要があります。
ーーー
いま、あなたの周りで、もしフェティシズムの違いによる衝突が起きているとしたら、それは上記の二つの言葉をお互いが理解することで解決します。そしてその理解には、お互いの『社会性の獲得』が不可欠です。
ーーー
次回から、この連載の「本当の主題」ーー我々フェティシストが進むべき未来について書こうと思います
たぶんそれは、とっても当たり前なことでしょう。
でもそれは、我々には当たり前のことでなくなる時があるのです。
当たり前なんだけど、常に頭に入れておかねばならないこと。それを書きます。
それが、老兵のおっさんにできる、きっと数少ない『バトンタッチ』の一つだと、思うから。
続く
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大森弘昭

大森弘昭

Night Gallery Cafe Crow店主でした(8/31閉店)。9月になったらただの42歳のおじさんです。
全身タイツが好きで、20年全身タイツで遊ばせて頂きました。これからは、これまで頂いた全てのご恩をお返しする日々が始まります。
よろしくお願いします。
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