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[ルポ]緊縛とは”対話”である – 風俗未経験者が歌舞伎町の緊縛バーに行ってきた[後編]


縄

歌舞伎町のド真ん中で緊縛バー初心(うぶ)に訪問した我々は、紫護縄びんごさんにお願いして本物の緊縛を見せてもらうことになった。(前編はこちらから

ちょうど日付が変わる時間で終電の関係か客のほとんどはハケて、数人だけの空間になっていた。

落ち着いた店内には静かにジャズが流れ、和風の部屋と調和している。ここでは自然と声も穏やかになる。

「じゃあはじめましょうか」

カウンターに座っていた壇蜜似の白衣の女性が静かに服を脱ぎ始めた。

あれ?この人さっき女性を縛ってなかったっけ?

「彼女、本当は縛られる方なんですよ」

緊縛されたい側の人でも縛る側もやるんだ!ちょっと驚き。

 

キャミソール一枚になった女性が畳にぺたんと座る。

びんごさんはその斜め後ろに座り、風呂敷を開き縄を取り出す。一本一本くくられた縄が20~30本ほど入っている。くすんだ茶色。

 

いよいよ始まる・・・空気が2人に引き寄せられる。

びんごさんが女性の肩をぐっとつかんだ。

 

「あぁっ」女性は声をあげるとビクンッと反応する。と同時に、ぐったりと頭を垂れてその体をびんごさんの手に預けた。

あっけに取られる我々。

「催眠術みたいでしょう?でもそうじゃないんです」

 

今度は後ろから首をぐっとつかむ。また女性が反応する。

縄を手にすると女性を後ろ手に縛り始めた。いよいよ縄を使った緊縛の始まりである。

 

緊縛SMというと、乱暴に、一方的に相手の自由を奪っていくというイメージを持つ方が多いのではないだろうか。

しかし、目の前で行われている行為は、驚くほど優しい。いや、もちろん腕力と縄でもって相手の自由を奪い、肉体的苦痛を与えているには違いないのだが、なんというか”相手が嫌がることをしない”のだ。

それより強引に動かしたら醒めてしまう、それより強くしても痛いだけ、そのラインがお互いの中で分かっている、そんな感じ。全ての動きが、予定調和ではないのにお互いの求めるままに調和している。全くの素人の自分が傍から見ているだけでもそれが伝わってくる。凄い。

縛る場所を変えるために相手の体を動かす、結び目を作るために縄を動かし、それが相手の体の上を這う。そんなプロセス一つ一つまでも、全てが快楽につながっている。

芸術性すら感じさせる。まさか緊縛バーで感動のあまり声を失うとは思わなかった。写真も撮りそこねてしまった。

 

そうこうしているうちに縄は上半身を縛り終え、女性は横倒しにされた上で天井の吊り具に繋がれている。体は畳に付いているが、浮かない程度に上から吊るされている形だ。

上半身の縄からつないでそのまま右脚へ。太ももからつま先まで、15cm間隔に斜めがけに縄が巻きつけられる。その間、女性は何度も脚をピクピクさせ、エクスタシーに達している。びんごさんは肩や膝などを時折ぐっと掴むのだが、そのたびに女性は大きく声を漏らす縛られることそのものよりも感じている。縄の感触と手の体温のコントラストや、”この男性に直接掴まれている”という感覚がエクスタシーを呼び起こすのだろうか。

 

左脚は膝を折ったままの形でまとめて縛られた。左右で縛り方が違う。その後、右脚の縄が天井に繋がれ、ぐいと引っ張られる。右脚が宙に浮く。上半身は畳についたまま、体は斜め。

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上半身がわの縄も、上に引っ張りあげられる。これで完全に体が畳から離れ、天井から吊るされている形になった。自重を縄が支えるので、より苦しそうに見える。基本的に縄は、自由を奪いながらも程よく余裕が残されていて、苦しいながらもうっ血しないようにバランスよく縛られているのだが(高度な技術!)、さすがに吊るされると苦しそうに見える。

ここまで来ると縛られる側の感覚など想像の域を超えてくるのだが、最初に普通に緊縛があり、吊るされることによってよりその苦しみが増す、という段階的な苦痛のプロセスは縛られる側をよりディープな快楽の世界に連れて行くのだろうという想起がなされる。

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※下着はつけたまま。

吊るされたまま、びんごさんは女性の体の各所ーーー膝、足、肩、顔ーーーを掴み、力を入れていく。意外なことに、胸や性器といった直接的な箇所は全く触れない。でも、否、だからこそ、より純粋で深い快楽がそこにあるのだろう。AVなどで展開されるような、一方的に体の自由を奪って男性側が好き勝手に優越感を感じるなどの行為とはまったく違うのだ。もちろんそれはそれで立派な性的嗜好として成り立っているのではあろうが。

この後さらに下半身の側が引っ張りあげられ、逆さ吊りの形になってさらなる展開があるのだが、下手くそな筆致で逐一詳細に語っても伝わるものは少ないので省略する。

吊られた状態から降ろされ、それぞれの縄がほどかれるまで、全てに意味があった。吊って満足して終わりではなく、それをほどき自由にしていくプロセス、縄のこすれ、体の運び、それぞれがお互いの行って欲しい/行いたい行為だった。2人の体の動き、女性の出す声、表情、縄の畳に落ちる音。全てが芸術性を感じさせた。

終わったあと、一つの最も洗練された演劇やダンスを見終わったような高揚感、満足感、安堵感があった。

 

「痛そう、苦しそうにしか見えなかったでしょ?」

感動しました、と言うとびんごさんは少し意外そうしていたが驚いたそぶりは見せなかった。

「今見せたものは僕と彼女だからこうなったのであって、他の方や初心者などはまた違った縛り方になります」

相手が今して欲しいものを汲み取って動くので、相手によってその深さもやってほしいことも全く違うものになるというのだ。深い、、、。

 

その後も緊縛の世界のこと、フェチのコミュニティのことなど、我々の矢継ぎ早の質問に丁寧に答えてくれた。びんごさんからしてみれば我々なんてただの冷やかしにしか見えないのだろうが、こうして圧倒的な本物をみせてもらった上に丁寧に対応をしてくれて、感謝しかない。

初心(うぶ)はとても居心地のいい空間で、マニアックな店のはずなのについつい長居をしてしまった。夜11時から深夜2時まで計3時間。当日は「餃子の日」だったらしく、手作りの餃子まで振る舞ってくれた。ニンニクたっぷりで美味しかった。

これでチャージが男性6000円、女性2000円でフリードリンク(!)というのだから優良という他ない。圧倒的お値段以上。

 

だんだんと眠くなってきたところで御礼を言って退散。ともかくも、緊縛とは単なる嗜虐的な快楽であると一口に言うには余りある、深い深い精神の交流の世界であった。

目覚めるかどうかは別として、筆者も正直ちょっと心惹かれてしまった。実際に行って見ないとわからない魅力というのがこの世には沢山あるということを深く実感した夜だった。

 

割と無計画に訪問した結果の記事となり、現場を伝えられる写真が非常に少ないのが残念だが、我々の体験した空気感が少しでも伝わってくれたなら嬉しい。

この記事を読んで少しでも興味を持った方は、その足を一歩踏み出してみてはどうだろうか。きっと他では得られない体験が待っているはずだ。

歌舞伎町の小さなSMバー 「初心-UBU-」

 

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FetiTokyo編集部

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