前回に引き続き、水中ニーソでおなじみの古賀学さんと様々な豪華ゲストがアートやファッション、フェチなどについて対談するトークイベント「月刊水中ニーソ」へ行ってきました。
6月のゲストはREALISEさん。REALISEさんは競泳水着を企画・製作・販売するメーカーです。2015年に発表した『フロントジッパー競泳水着』も話題になりました。
主催者の古賀さんと今回のゲストのREALISEさんとの付き合いは、古賀さんがTwitterで2012年12月29日に「リアライズのロゴがいらないと思う」とツイートしたことから始まったと言います。
会場はいつものように、なごやかなムードでトークが開始。今回も来られなかった方々にほんの一部をご紹介します。
REALISEが謎すぎる
月刊水中ニーソ6月号は「REALISEが謎すぎる」ということで今回のゲストとして呼んだとのことです。
そもそも、「REALISE」とはブランド名で、展開しているのは株式会社UEVOさん。トークはUEVO代表取締役の中村圭介さんが勤めました。
中村さんは二代目の社長です。先代の社長が元水泳部(ノスタルジー要素有)で競泳水着フェチだったことからUEVOを立ち上げたと言います。
先代はスクミズには興味はありませんでした。あくまでも競泳水着にこだわり、競泳水着愛好家がいることを信じてREALISEをスタートさせます。
当時、競泳水着は黒いものしかなく、たまにちょっと変わった水着メーカーが変わった競泳水着を少し販売するだけ。それはすぐに売り切れるという状況でした。なので先代は、色や素材にこだわった競泳水着はマニアに受ける、と考えたのだそうです。
先代は熱い情熱を持ち、2007年に企画書とともにフェチな競泳水着を作ってくれる工場を探し始めます。そして、2008年11月、初回生産200枚ほどでREALISEをスタートさせます。そこから2009年にラバー加工素材の競泳水着や、2011年に光沢ラバー加工素材の競泳水着など、さまざまな競泳水着をリリース。
REALISEの競泳水着は、お腹の部分が締め付けられてスタイルが良く見えるとか、着心地が良いということにこだわっていると言います。デザインはもちろん、生地も制作し、伸縮性が高く、体型の補正効果も高い競泳水着を作り続け、その高いレベルの競泳水着は、マニアの間で評判となり、国内外のグラビアなどで使われています。また、海外でも人気で、YouTubeには海外のアスリートがREALISEを着て制作した動画も多くアップされているそう。
先代は2013年に病気によって死去。競泳水着のために5年間を駆け抜けました。その跡を継いだのが創業当時からスタッフとして働いていた中村さんでした。中村さんは2014年にセカンドスキン素材によるアイテムを発表します。
先代の跡を継いだ中村さんでしたが、オタクやフェチが怖かったと言います。しかし先代の意思を継ぎ、素材にこだわった競泳水着を作り続けことを決意。
2012年12月29日に古賀さんが「リアライズの光沢メタリック生地の競泳水着。士郎正宗ちっくで素晴らしいと思うんだけど、肝心なリアライズのロゴがいらないと思う。同じ競泳水着でもアリーナとかスピードとかミズノのロゴはあった方がいい。」とツイート。
リアライズの光沢メタリック生地の競泳水着( http://t.co/8ssD05ij )。士郎正宗ちっくで素晴らしいと思うんだけど、肝心なリアライズのロゴがいらないと思う。同じ競泳水着でもアリーナとかスピードとかミズノのロゴはあった方がいい。
— 古賀学 (@manabukoga) 2012, 12月 29
※実際のツイート
中村さんがこのツイートを発見したのはツイートされてからすっと後のことでした。「水中ニーソの古賀さんがうちのロゴいらないと言っている」とショックを受けます。
そして、2014年10月、中村さんは新しいロゴを制作します。古賀さんの発言と自分が社長に就任したことにより心機一転するためでした。
中村さんが二代目を襲名した理由とは?

UEVO代表取締役の中村圭介さん
古賀さん(以下 古) 二代目に襲名したのは?
中村さん(以下 中) 結果から言えば「僕しかいなかった」というのがあります。それと僕が一番、知っていた。こういうプロダクトに対して理解があったということ。経営的なこととか経理的なことも知っていたということもあって、一番、適任者だったということですね。
古 引き継いでもよいと思うほどREALISEが楽しかった?
中 最初は『わけわかんないな~』と思いながら先代と一緒にスタートしたんですけどね。
古 中村さんは競泳水着フェチではない?
中 僕は正直、違いますね。競泳水着の愛好家でもないしコレクターでもないですね。
古 だけど事業として、お仕事して、競泳水着も嫌じゃないと。
中 ありがたいことに着用してくれている皆さんの画像とか見て『かわいいな~』と思いますね。『もう少し、こうしたエッセンスを入れた方が面白いのかな?』と思うところに仕事の魅力を感じてやり始めたところが強いですね。
フロントジッパー競泳水着をリリース

当日展示されたもの
古 フロントジッパー競泳水着は競泳水着ではないですよね(笑)。
中 そうなんですよ。そこはけっこう、突っ込まれます。
古 でも素晴らしいプロダクツですよね。
中 商品のサンプル画像をネットにアップした時点から祭りが始まりましたね。僕らの公式なアナウンスじゃないところで勝手に広まっていっちゃった。「おいおい」という感じはありましたね。
古 名前は最初からフロントジッパー競泳水着?
中 そうですね。それは最初から。解りやすいということもあったので。
古 中村さんと話をしている中で「ドメヨウ」という専門用語がある。
中 みなさん解りますか?ドメスティック用という意味です。
古 中村さんは「REALISEの水着をメインで買ってくださるお客様がドメヨウなので」とおっしゃる。ドメスティック(家庭的)用は、買ったことも誰にも言わない。買って恋人とかに着てもらって楽しむだけ。パブリックとドメスティック。でも、パブリックなところに出しても面白いプロダクツなんだけども、完全にドメスティック。ドメスティックな商売は面白いし、そこは大切にしたい。同時にドメスティックなだけでなく新しくパブリックなことが始められたら面白いなと。そう考える中村さんには二代目らしいところがある。
中 競泳水着フェチではないところから始まっていますからね。
古 先代が築いた世界観は世界観でそのままにして、それはそれで発展していくべき。だけど、それとは違う中村さんの世界観がある。そこから生まれたフロントジッパー競泳水着なるプロダクツが発表前に流出して祭りになる。これがドメスティクじゃない。
中 『やっぱりいけるんだ』とその瞬間に思っちゃいましたね。軽い気持ちじゃなくて時代が違う、ハードルが下がっている、『そういうものが受け入れられるんだ』と思いましたね。
古 「時代が違う」というのはみんな、ずっと言ってますね。この時代でしか許されないプロダクツというか。これは5年前に出していてもダメだし、5年後じゃ刺さらない。
中 祭りが始まったのが3月6日。サンプルの段階のものをネットに上げたら、「おいおいおい」となっちゃった。祭りになった時、本物があると気づいていない人も多くて。
古 あっ、そうか。情報だけがネットを走ったわけね。
中 みんな、「これなんだ?」となりましたね。3月25日に発売して、「実際、ものあったんじゃねえかよ」というのと「作ったんじゃねえかよ」の時系列がバラバラになりましたね。
古 祭りの後、作って間に合うわけないじゃんね(笑)。
中 発売日は30分で初回のロットがすべて完売して。ちゃんと祭りになった成果が出てくれてありがたいと思いましたね。これで受注が入らなかったら何を信じて生きて行って良いのかと思った(笑)。
フロントジッパー競泳水着誕生秘話
古 そもそも、フロントジッパーを競泳水着に付けることになったのは?
中 グラビアアイドルさんのDVDを見て、どういう使い方をされてて、どういうアングルで撮っているのか? こういうフェチがいて、こういうところに萌えるんだという分析をしていたんですよ。その時に競泳水着の前を裂く、というか全体的に裂いちゃっているのが多かった。競泳水着を破壊するというのがあったんです。
古 水着屋としては悲しいよね。
中 これはちょっと悲しいな~というのがあったんです。実はその前にコスプレイヤーさんから『胸にはすごい自信があるけど、競泳水着を着るとつぶれちゃう』という悩みを聞いていたりしていたんです。なので、いわゆる乳袋というのをテーマにした、胸を武器にできるコスチュームを作りたいな、というのが根底にありました。そこへ、こうゆう破壊があったので、じゃ、これをからめたら行けるんじゃないか?というのがあって・・・。
古 最初からジッパーだったんですね?
中 そうなんです。ジッパーが付いている、というのは過去にも商品としてはあるんですよ。
古 確かに過去のプロダクツにもありますね。
中 へそのとこまで空くやつとか。ぜんぜんあるんですけど、僕はどうしても胸の下のところで止めたくて。というのは、胸が寄ってないと意味がないと思ったんです。ここは止めようと思った。最初、ホックでも良いんじゃないかと思ったんですけど、ダブルジッパーだったら表情が変えられるよな、というのがあって、じゃ、水着に付けてしまおう、と思って。別注をかけてファスナーもこの長さのものを作ってもらいました。
古 ファスナーから作った(笑)。
中 そこは先代の意思を受け継いで、ないものは作れと。
古 そこにハイネックと組み合わせた。
中 首が閉まっている、ということも重要なファクターだと気づいたんです。
あとがき
この後は、新作の競泳水着の話や今後のREALISEが目指すものなど濃い内容のトークが続きました。
次回の月刊水中ニーソ7月号は海洋堂の〈センム〉こと宮脇修一社長が登場。そして水中ニーソのメインモデル・しまりすちゃんも参加。現在製作中の新作「水中ニーソ3(仮)」の現状報告もあるとのこと。
お楽しみに!
イベント概要
タイトル:月刊水中ニーソ
場所:中野ブロードウェイ Bar Zingaro/Zingaro Space
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ2F
電話:03-5942-8382
日時;毎月第二水曜日(ニーソの第二+水中の水曜日)19時〜2
(シーズン2:5/13、6/10、7/8、8/12)
料金:2,000円(1ドリンク)
予約方法:Bar Zingaro(info@bar-zingaro.jp <mailto:info@bar-
zingaro.jp>)まで、フルネームと電話番号をメールで

瀬見紫紅
本業もライターで編集者。専門はアートとカルチャー。著書も数冊ある。
僕にとってのフェチとは【解放と表現】。フェチなカルチャーを発信します。
【ライティング+編集+撮影等のお仕事募集中】。
twitter:@SemiShigureXXX
mail:SemiShigureXXX@gmail.com

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