会場までの「暑い」道のり
それはとても、蒸し暑い日でした……。ひと首輪展の会場は、地下鉄新宿御苑駅から徒歩数分とはいえ、JR・小田急新宿駅からはそこそこの距離があります。
筆者が新宿に到着したのは14時半頃……炎天下ではなく、高湿度で蒸し熱い気温の中、汗で張り付く衣服の不快感に我慢しながら、まずは新宿御苑の入り口を目指してひたひた歩き。
iPhoneの画面には、「あとどれ位で着きますか?」という、同行者からの無慈悲なLINEのメッセージが。そして新宿御苑駅が見えた! でも出口が一杯ある! 「大木戸木戸門の改札にいます」とメッセージが。
しかし、地図を見ると出口番号の表記しか……「先っぽのほうです」というメッセージを介した天の声に「今向かってます!」と全力の返信を行って、相変わらず高湿度の暑さにやられながら、同行者と合流して会場を目指す……と、マンション(そう、ひと首輪展の会場はスタジオとして利用されているマンションの一室なのです)の前に2人のスタッフが。
ひと首輪展の来場者であることを伝えると、自動ドアのロックを解除され、「6階へお上がり下さい」という伝えられるのですが……この時点で、既に怪しいパーティーとか、秘密結社の会合のような雰囲気がムンムン。
マンションの入り口にも、会場となる部屋の入り口にも案内板が出ていないので、扉を開けるのがちょっと怖かったり。
界隈に知人がおらず、同行者もおらず、一人で来場した方は、案内板のないマンションの一室の扉を開ける事に、怖さ半分興味半分な、ワクワクドキドキを実感していたかもしれません。
それに対して、明るい会場内はアットホームで和気藹々とした空間でありつつ、とある小部屋はものすごいディープという、両極端な世界が同居しているのが、ひと首輪展の興味深い点でもありました。
「熱い」会場の雰囲気
玄関で履き物を袋に入れて、まず真っ正面にあたるリビングに見えるのが展示作家のブース。窓からさしこむ光や白壁で、和気藹々とし空間がさらに明るく見えていました。
玄関を右手に曲がると、スタッフルーム、お手洗い、そして小部屋が(こちらについては後述)あり、リビングに向かう廊下の左手に、天ノ介さんのブースやワークショップに使う数々の器具や重さ30kg(!)の丸太などが並んでおり、横目で見ながらまずはリビングへ。
14時50分頃では、動けないほどの大混雑ではありませんでしたが、かなりの盛況振りで、数十分歩いてきた状態では、兎にも角にも「暑い」。
客層的には、やはり圧倒的に女子(単独・複数)が多い印象があるほか、紫護縄びんごさんや不知火さんら、Feti.Tokyoの記事でお馴染みの面々や、オーディション参加者も少し早めにいらしていたり。
会場内はやや混雑と蒸し暑さで、各ブースを改めてじっくり見て回れたのは夕方頃でした……そんなこんなで、まずは駆け足での撮影になったブースの写真と、感想をご紹介したいと思います。
リビングルーム入った直後の左手には首輪女子協会のブースがあり、その隣にはクマ五郎さんのブース。
和風テイストの首輪やチョーカーを中心にするほか、首輪ストラップ等の小物も展開。
クマ五郎さんの作品以外にも、他の作家さんの作品や、ひと首輪展にも出展されていたケイロジティクスさんの鈴とのコラボ作品も。時計を組み合わせたチョーカーは、特に来場者の関心を集めていました。
クマ五郎さんのお隣は水溜さん。
シンプルかつベーシックなデザインが素材の高級感を引き立てます。気軽な私服よりも、ボンデージやドレス等々、撮影用にキメた衣装と組み合わせに最適やも。
そのお隣はうさこさん。「『誰かに飼われたい女の子』に身に着けて欲しい首輪」をコンセプトにしているので、装飾や色使いも、ガーリッシュに。
ブースの前には終始女の子が足を止めていた印象があり、ひと首輪展のポップで入りやすい部分を支えている作品達。「愛の告白首輪」とか、自撮りで強烈な効果を発揮しそうな予感。
値段も手頃なので、本格的な首輪に興味はあれど、首輪を付けてくれるご主人様がまだいない、金額的にもまだ敷居が高い等々……あれこれモヤモヤしてる方でも気軽に手を出しやすいというのも特徴です。
うさこさんの隣は、革や七四さん。リビングに入って左側から順にブースを紹介しておりますが、狙ったかのように、ポップで手に取りやすい雰囲気と本格的かつ重厚なブースが交互に配置されていることに気づかされました。
ゴージャスな装飾や、金属パーツが特に目を引きます。
リードを引っかけるためのリングもあり、「ザ・首輪」という佇まい。写真一番手前の作品は、リング部分が三日月風にも見えて、特に印象深いものでした。
革や七四さんの向かいはあっきぃさん。女性に大人気の可愛くオシャレな首輪がズラッと。
首輪を飾るレース部分も勿論ですが、相変わらずハート型の錠前や金属パーツが愛らしく、いつかは個人的にも欲しいなと思いつつ、首輪を付ける特定の相手はおらず、かといって自分で付けてもファッションと組み合わせたり、自撮りをするワケでもなく、ただ虚しい限りなので、撮影用のアクセサリーとして活躍しそうです。
値札に猫のスタンプが押されていたりと、細かな装飾にも、あっきいさんらしいこだわりが見え隠れしています。
昨年11月にギャラリー新宿座で行われた「『背徳』22人展」でのあっきぃさんのブースには、お店番猫も並んでました、
お隣は新宿座でも作品が展示販売されているITAOさん。スタンダードなデザインにワンポイント的な装飾が良いアクセントに。
SMモチーフが作品ベースなので、武骨さや奇妙な威圧感がまた魅力的であり、使い込むにつれて様々な表情を見せることでしょう。
新宿座でお馴染みの某クマちゃんズも、ブース手伝いで出張。
お隣は編み上げが特徴的なコルセットチョーカーが目を引くyuyaさんのブース。
一風変わったファッションアイテムとして、街中とかでもさり気なく付けて歩けそうです
薬莢(?)が装着されたこの首輪には、ツボをバッチリ突かれました。
そのお隣、クマ五郎さんの向かいにあたるブースはk-logisticsさん。首輪ではなく、クマ五郎さんの作品にも使われている鈴の展示。
大きさも形も様々(一般的な丸形のほか、四角、カウベル等)な鈴は日本の職人さんの手によるもので、現在は作れない在庫限りの物もあり。
鈴を使った作品によるコラボ案も募集されております。
鈴を使ったコラボ製品を作って下さる作家さんを募集しています。 ジャンルは問いません。 ご興味ある方メッセージをお待ちしております。 #ハンドメイド #レザークラフト #手芸 #スチパン pic.twitter.com/EieMcC8pN0
— k-logistics (@k_logistics) June 15, 2015
天ノ介さんのブースはワークショップで混雑していたので、写真を取り損ね……そして最後にご紹介するのは、入り口右手の小部屋である、鉄枷屋 鉄造さんのブース……というか「鉄の部屋」。
入り口に近づいた瞬間から漂う、鼻血にも似た鉄の匂い。床に並べられた鉄製拘束具の存在感や、ガシャガシャと響く音もまた濃厚で、ひと首輪展で最もディープな部屋であることは、言うまでもないでしょう。
鉄造さんによれば、拘束具は開場して暫くの間はきっちり並べてあったけれど、時間が経つにつれて散らかっていくように見えて、使い勝手の良い配置になったとのこと。
100円で全拘束具試したい放題で、筆者の知人も数名鉄の拘束をエンジョィしておりました。
筆者が鉄蔵さんの部屋にお邪魔したのは15時代、最適化がバッチリ行われた状態でありました。
フェティッシュ・イベントのガールズ・パワー
会場について一通りの部屋を回った後、同行者はまにけっとの「マニーガール」オーディションに出場するため、会場である初台玉井病院へ向かう一方、夕方頃には玉井病院からひと首輪オーディションの参加者が続々と来場しておりました。
一通りの取材を済ませた後は、開場直後に取材で現地入りしていた瀬見紫紅さんと合流して、オーディションの時間までお茶をしながら、フェチについてや、首輪について、最近のフェティッシュ系イベントについて色々と談笑。
その中でふと気づいたのが、フェテイッシュ系イベントのガールズ・パワー。ひと首輪展はその顕著な例で、冒頭でも書いたように筆者が開場についた時点では、単独の女性(というより女子)客が数多くみられ、男性はカップルでの来場が多い印象でした。
軽やかなファッションとしての首輪が広く受け入れられるほか、首輪女子協会の活動も、女の子が首輪を使った自撮りを上げるだけでなく、ひと首輪展のような現場あるいはシーンに積極的に参与する敷居を大きく下げている要因かもしれません。
長らくフェチやアンダーグラウンドの世界に沈んでいると、首輪も見慣れたアイテムなので感覚が鈍ってしまうのですが、一般層から見れば首輪はちょっとアブノーマルで背徳的なものと認識されることは少なくないでしょう。
そんなイメージを押しのけて、来場客やオーディション参加者として会場に押し寄せる女の子たちの姿に、フェティッシュ・イベントにおけるガールズ・パワーを感じました。
ではボーイズ・パワーは? というと、これがまた盛り上がりにくいのが現状です。
首輪を組み合わせたファッションは、洋服のバリエーションからして女の子のほうが圧倒的に有利ですし、男の子にとっては隔世感もある自撮り文化においても、首輪は強い親和性を持っています。
レザー、ボンデージ、コルセットといったフェティッシュ・ファッションを例にしても、主流を成すのは(身体性を強調する)女性用ファッションです。
男性でも比較的身に纏いやすいものとしては、全身タイツやラバーといった男性向きというより中性・無性的なものがありますが、どれもマニアックで、首輪のように手にするまでの敷居が低くはなく(オーディション参加者の中には、原宿で首輪を買ったという方もいました)、日常生活でも使いにくいので、まにけっとやフェチフェスのように、男性客が主要な来場者を占めるイベント(展示やパフォーマーのガールズ・パワーは言うまでもなく)のほうが、男性にとっては気軽に接しやすいフェチ・イベントかもしれません。
さてさて、ガールズ・パワーはひと首輪展の終了後に行われたひと首輪オーディションで大爆発しておりまして、会場後方で撮影していた筆者も、圧倒される一方でした。
オーディションの模様は、瀬見紫紅のリポート記事をご参照ください。
また、記事は7月以降になると思いますが、オーディション合格者(数名・現在調整中)に簡単なインタヴューや、写真集を含めた今後の活動に関する取材によるアフターレポートも予定中なので、こちらも乞うご期待。

鈴木真吾
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