こんにちは。「ふたなりコラム」第二回目です。都内にてふたなり創作活動をしている不知火と申します。
さて、前回の第一回コラムにて基本中の基本、「ふたなりって何?」をごく簡単に説明いたしました。
しかも内容的には日本限定の内容でしたね。ふたなりも最近では「FUTANARI」として世界に広まっていますが、両性具有、半陰半陽、トランスジェンダー等とは異なり日本独自の創作活動から発生した特殊な文化でした。
今回はそれを踏まえてふたなりに関する知識を深めていきましょう。今回のテーマは「ふたなり文化の起源」です。世界を含めて日本で日本でふたなり文化が発生するに至るまでの流れを見て行きましょう。
古代ギリシャに見るふたなり
出っ張っていたりへこんでいたり、盛り上がっていたり平らだったり。
男女の体と言うのはお互いに異なり、片方が足りないところをもう片方が補っていてるように見えます。
更には心の何かを埋め合わせるかのように、満たされない欲に動かされ体や言葉を求め合うのが男女・・・。
今に限らずこの男女の状態を身も心も不完全な状態であるとみて、「もしかしたらこの不完全な状態の前の『完全体』であった時期が人類にはあったのではないか?」と考えた人々が大昔にいました。その代表がかのプラトン。
著書「饗宴」にて初めて歴史に登場したその両性具有、「アンドロギュヌス」は頭が2つ、手足がそれぞれ4本、男女両方の性器を持って太陽や月のように完全を意味するよう男女一体の球体をしていたといいます。
(引用:http://www.ccn.aitai.ne.jp/~otatuto/kobanasi29.html)
その原初の人類、アンドロギュノスは偉大な力を持っておりましたが、その力のため神の怒りをかってしまい、体を両断され今の不完全な男女に分かれてしまったといいます。
ふたたび完全体になりたく不完全な男女が求め合うことが愛という事であるらしいです。
この男女の何とも悲しく美しい関係はその後のギリシャ神話にも見て取れます。ヘルマプロディートス。
先のプラトンのお話は先天的に両性具有、かつてふたなり「だった」お話ですが、これはその逆のお話。
美しい神の息子であるヘルマプロディートスに欲情した泉の精サルマキスに激しく求められ抵抗むなしく体が融合してしまい両性具有の体になってしまった
と言うおはなし。
恥じたヘルマプロディートスは泉に入った者すべてを自分と同じ両性具有にする呪いをかけました。
これは男女が後天的にふたなりに「なれる」おはなしです。
(ルーブル美術館蔵、「眠るヘルマプロディートス」 引用:http://blogs.yahoo.co.jp/bach_cantata_no147_mari/18261540.html)
男と女の性しかないというより、このようにもとは一つだったとか、後から一つになるなど、性の状態に変化があってもいいという自由な概念はその後に
さらに自分で自分の性を決められるかもしれないという希望と共に宗教、文化、文学に多くの素晴らしい影響を残すこととなりました。
インドにおける伝統的な半陰陽者、「ヒジュラー」
他にも、世界中に見られるふたなりや二つの性に関しての様々な文化を見てみましょう。
インドでは古来より男女の他に「ヒジュラー」と呼ばれる第三の性があります。
先天的な半陰陽の者。
後天的な性転換者。
女装の男性。
それら既存の性の範疇ではない構成や育成制度も独特なこの集団は宗教的階層制度のカーストの外側の存在ながらその存在を認められ、
宗教的式典や個人的な祝い事の席にも呼ばれるという形で独特の地位を得ています。
少数の先天的な半陰陽以外はほとんどが自主的な志願者でした。
日本におけるふたなりの原型
日本では奔放な性や祭りの文化が根付いており、早くも平安時代には両性具有者を表す第三の性としての「二形」の記述があり、
やがて歌舞伎、浮世絵、踊り、吉原など文化が生まれ、江戸時代には両性具有を意味する「ふたなり」と言う言葉に女性のように美しい男という意味も加わり
現在の日本の多様な文化の礎が形成されていました。
この多様性を維持したまま、近代の漫画アニメ文化と、近年の個人でのコンテンツ制作のパソコンを使っての容易な制作環境が合わさりふたなり文化がオタク界隈から加速的に発達拡散しました。
さて、今回は様々な国におけるふたなりの起源をみてみました。こうしてみると、ふたなりとは現代だけの特殊な空想の産物というわけではなく、深い歴史を持つ人類共通のイメージであることが分かります。
次回はふたなり信仰について書いていきたいと思います。
不知火(しらぬい)
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